高
松翔は、大和小学校の6年生。ある日、翔は母親とケンカをしたまま学校に行き、授業中に激しい地震に襲われる。揺れはすぐに収まったが、学校の外は岩と砂
漠だけの荒れ果てた大地になってしまっている。突然の出来事に皆パニックに陥り、発狂した教師は全員亡くなってしまう。やがて荒廃した世界の正体が、文明
の崩壊によって滅んだ未来の世界だと知った子供達は互いに協力し、大和小学校を拠点とした「国」を築くことを決意する。大和小学校国の総理大臣として児童
の代表となった翔は、児童たちみんなが家族であるという意識の元、規律正しい生活の基で困難を乗り越えていけるよう精一杯の努力を重ねようとする。
し
かし、飢餓や未知の事象に対する恐怖心からくる狂気や内部対立、伝染病の蔓延、唯一生き残った大人である関谷の暴虐、荒廃した未来に棲息する未来人類の襲
撃などの脅威により、次々に死者が増え、児童たちの数は日を追う毎にじわじわと減っていく。更に、学校をタイムスリップさせる原因となった手製のダイナマ
イトによる爆発事件の犯人が翔であったというデマが流れ、翔は次第に孤立してしまう。
凄惨な事件が次々と襲い掛かる中、翔と過去の世界を繋ぎ止
め、翔にとっての唯一の心の支えとなっていたのは、5年生の少女、西のもつ不思議な力で時空を超えて母とコンタクトを取れるという、不思議な現象だけだっ
た。周囲が子供達の帰還を諦める中、息子の帰還を信じる翔の母は、西の不思議な力によって未来に入る翔と仲間達に必死の思いで援助の手を差し伸べ続けてい
た。
その後、自らの意思で学校を出て行った後、息も絶え絶えの状態で戻ってきた女番町の口から「天国」の存在を知らされた翔たちは、学校一帯を覆
わんとする高濃度の光化学スモッグの雲から逃れるため、富士山にあるという「天国」の存在に一縷の望みを託し、生き残った児童たちを連れて天国を目指して
荒野を行進する。迫りくる化学スモッグや広大な地割れを乗り越え、翔たちがたどり着いた「天国」。そこは未来の科学力で築かれたレジャーランドの残骸の残
る場所であった。暴走したロボット達の襲撃から逃れた翔たちは、その奥に鎮座するコンピューターから、自分たちが元の世界に戻るための重要な糸口が大和小
学校そのものにあることを知る。
しかし、翔の存在を疎み対立する同級生の大友らのグループとの抗争の激しさはついに頂点に達し、狂気に駆られた子
供達は無残な殺し合いを始めてしまう。理性でこの事態を耐え切った翔は自分が爆発事件の犯人だと告白する振りをしてみんなをおびき寄せつつ学校に戻り、今
こそ元の世界に帰ることができる最後のチャンスだと説得する。しかし、大友たちは聞く耳を持たず翔を殺そうと一斉に攻め寄った。
今まさに翔が殺さ
れようとした時、大友はとっさにみんなから翔を庇い、事の真相を激白した。大和小学校を未来に飛ばすことになった大地震は、優等生であることを求め続けら
れる苦悩から逃れんがために、校舎を吹き飛ばそうとして自分が仕掛けた手製のダイナマイトが原因だったこと。罪悪感のあまり、翔に全ての責任を押し付けて
いたこと。全ての真相が明らかに成った今、翔は大友と固く手を握り合って和解し、再び友情を取り戻す。
『強大なエネルギーの発生によって次元の裂
け目を生み出すこと』。それが、『天国』のコンピューターが語った、過去の世界に帰る唯一の手段であった。大友の残したダイナマイトの最後の1本に望みを
託し、翔たちはエネルギーの発生源を生み出すべくダイナマイトを爆発させるが、思惑は外れる。爆発の影響で火山活動が活発になってきたことを利用して再び
挑戦するも、失敗に終わってしまうのだった。
落胆の中、翔たちが見たものは荒れ果てた世界に垣間見えた、命の再生の片鱗であった。その様を見た翔
は、『荒廃した世界の復興こそ自分たちが未来世界に来た意味だった』と結論付け、ここに留まることこそが自分たちの選ぶべき道なのだとみんなに力強く語
る。そして、過去の世界から母親の手で送られてきた援助物資により、過去と未来の世界に繋がりが生まれたことに希望を見出した翔たちは、過去への帰還を諦
める代わりに、爆発に巻き込まれ一緒に未来に来てしまった幼稚園児のユウちゃんをなんとか現実世界に送り届けようとする。幼いながらも、悲惨な未来の姿を
その目で見続けてきたユウちゃんは、未来の地球を絶対に荒廃させないよう努力することを翔たちに誓い、みんなに見守られながら過去の世界へと帰っていっ
た。
翔が未来に来てから書き綴ってきた日記はゆうちゃんの手から翔の母親へと手渡され、それによって未来と過去を繋ぐ架け橋が生み出された。未来の世界で息子が元気に生きていることを知った翔の母は、天を見上げて未来の世界への希望に想いを馳せるのだった。
楳図かずお-漂流教室 全11巻 (RAR/415.41MB)
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